ナンシーはパリ東駅から直通急行で約3時間の場所に位置するフランス北東部の街。ここは貴族の華やかな生活を彩ったロココ様式が15世紀に、一方で庶民の生活まで浸透した機能的なスタイルであるアールヌーヴォー様式も生まれた場所だ。現在はその両方を至るところで目にすることができる。スタニスラス広場は、ユネスコ世界遺産にも登録された観光名所だ。残念ながら私たちが訪れた際は、スタニスラス門周辺で整備のための工事が行われていた。フランスは、観光のオフシーズンである冬に世界遺産などの整備工事がよく行われている。
「極寒急行」ナンシーは美しい街だった。
私たちはスタニスラス広場を皮切りに、ロレーヌ博物館、ナンシー派美術館といくつかの観光名所を徒歩でまわって行った。
ロココやアールヌーヴォーと言われても、それが街中に溢れているため注意しなくては発見できない。逆に言えば、そうした芸術性が嫌みなく溶け込んでいるということだろう。
私たちは大満足。ただ、じっくりと観光したため予定していた列車の時間に間に合わなくなりそうだった。そう、この日は3時間かけてホテルを予約しているパリに向かわなければならない---
なんとか走ってパリ行きの急行に飛び乗ったが、あいにく座席が混み合っている。
わたしたちは空席を探して車両から車両へ移動した。
「あった~助かったよ~」
一日歩き回って疲労困憊の私たちにとっては地獄に仏だ。いや、カトリック主流のフランスならば、神の恵みというべきか。だが…
………寒い
おかしい、出発しても暖房が入らない…
だが、不思議なことにだれも文句一つ言わない。他の乗客は平然とコートに帽子をかぶり、手袋まで装着しながら雑誌をめくったりしている。
フランスではこんなことはよくあるのか?だとしたら車掌に文句も言えない。旅慣れていない日本人と思われるのはカッコ悪いし…
前の座席の下には犬がおとなしく座っている(ヨーロッパではペットもよく同乗している)。飼い主の会話からすればパスカルという名前らしい。まるまる太った贅沢そうなシェパードだ。
おーパスカルよ。おれはおまえの脂肪いっぱいの腹の下にこの冷えた手足を忍び込ませたいぞ…そしたらどれだけ温かいだろうか。でもおまえはきっとおれを噛むだろうな。いや、根拠はないけど。
さらに困ったことに睡魔が襲ってきた。まずい。雪山で遭難して眠ったら死ぬんだっけ。ふつうならそうは考えないが、車内は尋常ならざる寒さだ。外はすでに大雪になっている。横で座っている妻に聞いてみた。寝たら危ないかなと。そしたらニヤっと笑って一言。
「ほう、フランスで星になってみるか?」いやです。絶対。起きてます…
結局この後は、小・中・高の校歌を頭の中で繰り返し唱ったり、阪神タイガースのヒッティングマーチ1番~9番プラス六甲おろしをリピートしたり、車内販売の温かい飲み物を3回も注文したりしながら、無事にパリ東駅に到着した。
実は妻も相当寒かったらしい。冷え性的な体質でもあるので当然だろう。だが、もしかしたら私の方こそ寒くないんじゃないかと思っていたそうだ。なぜなら、普段から体温が高いから。だから、自分も寒くないふりをしていたそうだ。負けず嫌いなものだ…
でもあの車内で寝てもほんとに星にならないのだろうか。実際の温度がどれくらだったのか今でも気になる。
ちなみにこういうことはよくあるのか?と長期のフランス滞在経験がある妻に聞いてみた。
「ないよ。運がわるかったね~」あんたすごいよ…他の乗客も文句一ついわずに…
もしかすると、単に自分が寒がりなだけなのだろうか?謎である。
ナンシー派美術館では19世紀末アールヌーヴォー様式の芸術品を集めている。ガラス工芸で有名なエミール・ガレの作品も多数目にすることができた。アールヌーヴォーとは、昆虫や植物をモチーフにしたスタイルということだった。
ちなみにこの美術館と非常によく似た名前の「ナンシー美術館」はスタスニラス広場に面した場所の一角にある。ここにはモネやモディリアーニなど、高名な芸術家の作品が展示されている。
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